「作図はコンパスの線を消してしまって、×になった」——中学3年の秋に、よく聞く話です。
作図は、配点のわりに落としやすい問題です。答えだけ合っていても、かいた弧を消すと0点になることがあります。逆にいえば、手順さえ体にしみこんでいれば、確実に取れる問題でもあります。
当サイトが16都道県の公立高校入試(令和4〜8年度)を調べたところ、作図は11都道県で出ていました。出ていない県もあります。自分の県で出ているかどうかは、この記事の後半の表で確かめてください。
この記事では、その11都道県の出題を数え直して、よく出る5つの型にしぼって手順をまとめます。
1. まず結論|作図の道具は3つだけ
入試の作図は、見た目こそいろいろですが、使う道具は次の3つがほとんどです。
- 垂直二等分線(2点から等しい距離)
- 角の二等分線(2辺から等しい距離)
- 垂線(直角をつくる)
難しく見える問題の多くは、この3つのどれかを2回使えば解けます。
残りの2つ——特別な角(30°・45°・60°など)と2つの条件を満たす点——も、この3つの組み合わせです。順に見ていきます。
2. よく出る5つの型
数え方は、当サイトの教材づくりで作った一問一答のカードをもとにしています。「◯/11都道県」は、作図が出ている11都道県のうち、その型にふれているカードがあった県の数です。
型① 線分の垂直二等分線(11/11都道県)
問われ方:「線分ABの垂直二等分線を作図しなさい」「2点A・Bから等しい距離にある点を…」
- 点Aを中心に、ABの半分より大きい半径で弧をかく
- コンパスの開きを変えずに、点Bを中心に弧をかく
- 2つの交点P・Qを通る直線をひく
なぜ:PもQも、AとBから同じ距離にあります。そういう点を集めると、ABのまん中で直角に交わる1本の直線になります。
※ 半径が「ABの半分より大きい」でないと、2つの弧が交わりません。ここだけ守れば、半径はいくつでもかまいません。
型② 角の二等分線(11/11都道県)
問われ方:「∠XOYの二等分線を作図しなさい」「2辺OX・OYから等しい距離にある点を…」
- 頂点Oを中心に弧をかき、2辺との交点P・Qをとる
- P・Qそれぞれを中心に、同じ半径で弧をかき、交点Rをとる
- OとRを結ぶ
なぜ:OP=OQ、PR=QR、ORは共通。三角形OPRと三角形OQRがぴったり重なるので、∠POR=∠QORです。
型③ 垂線(9/11都道県)
問われ方:「点Pから直線ℓにひいた垂線を作図しなさい」「点Pと直線ℓとの距離を…」
- 点Pを中心に、直線と2点で交わる大きさの弧をかき、交点A・Bをとる
- A・Bそれぞれを中心に、同じ半径で弧をかき、交点Cをとる
- PとCを結ぶ。直線との交点Hが「垂線の足」
なぜ:PA=PB、CA=CB。つまりPもCもA・Bから等距離なので、直線PCは線分ABの垂直二等分線です。型①と同じ仕組みです。
🔴 点が直線の「上」にあるときも、やることは同じです。その点を中心に弧をかいて、直線上に左右2つの交点をとってしまえば、あとは型①そのものになります。
型④ 特別な角(11/11都道県)
問われ方:「30°の角を作図しなさい」「45°回転させた線を…」「正三角形を作図しなさい」
| つくる角 | 作り方 |
|---|---|
| 60° | 正三角形をかく(3辺を同じ半径でとる) |
| 30° | 60°を二等分する |
| 15° | 30°をもう一度二等分する |
| 90° | 垂線をひく(型③) |
| 45° | 90°を二等分する |
| 120° | 60°を2つ続ける |
| 135° | 90°+45° |
覚えるのは「60°は正三角形」「90°は垂線」の2つだけ。あとは二等分と足し算でつくれます。
※ 正三角形の作図そのものも 9/11都道県で出ています。手順は60°をつくるのと同じなので、ここに含めました。
型⑤ 2つの条件を満たす点(11/11都道県)
いちばん出る応用です。「〜であり、かつ〜である点Pを作図しなさい」という形で出ます。
コツはひとつだけ。条件を1つずつ「線」に言いかえて、2本ひいて交点をとる。
| 条件の言い方 | 引く線 |
|---|---|
| 2点A・Bから等しい距離 | 線分ABの垂直二等分線(型①) |
| 2辺(2直線)から等しい距離 | その角の二等分線(型②) |
| ある直線の上にある | その直線そのもの |
| ある点から決まった長さ | その点を中心とする円 |
| ある直線に垂直 | 垂線(型③) |
上の図は「∠XOYの2辺から等しい距離にあり、かつ2点A・Bから等しい距離にある点P」の例です。∠Oの二等分線(2辺から等距離)と、ABの垂直二等分線(2点から等距離)をひいて、交わったところがPです。
🔴 「2つの条件」と気づけば、あとは型①〜③をもう一度使うだけです。難問に見えるのは、条件が日本語で書かれていて、線に翻訳する一手間があるからです。
3. 落としやすいところ4つ
- 🔴 かいた弧を消さない。作図の問題は「手順が正しいか」を見ています。きれいにしようと消すと、採点できる跡がなくなります
- 🔴 コンパスの開きを、途中で変えない。「同じ半径で」と書いた手順は、開きを固定したまま2回かく、という意味です
- 定規で長さを測らない。作図の定規は「まっすぐな線をひく道具」です。目盛りを使って中点をとると、作図として認められません
- 条件を線に言いかえてから手を動かす。いきなりコンパスを置くと、何をかいているのか分からなくなります
4. 練習問題(3問)
当サイトが作ったオリジナル問題です。紙とコンパスを用意して、手を動かしてください。
第1問(型①)
線分ABがあります。ABの中点Mを作図しなさい。
第2問(型③+型④)
直線ℓと、その上の点Oがあります。Oを頂点として、ℓとの間が45°になる半直線を作図しなさい。
第3問(型⑤)
下の三角形ABCで、辺BC上にあって、2点A・Bから等しい距離にある点Pを作図しなさい。
解答
- ABの垂直二等分線をひき、ABとの交点がMです。(中点だけが要るときも、垂直二等分線をひくのが正しい手順です)
- まずOを通るℓの垂線をひいて90°をつくり(型③)、次にその90°の角の二等分線をひきます(型②)。
- 「2点A・Bから等距離」→ABの垂直二等分線。「辺BC上」→辺BCそのもの。この2本の交点がPです。
第3問が型⑤です。条件を2本の線に言いかえた時点で、ほとんど終わっています。
5. どの都道県で出ているか
当サイトが教材づくりで調べた、16都道県の公立高校入試(令和4〜8年度)のうち、作図が出ていたのは次の11都道県です。
| 都道県 | 確認できた年度 | 都道県 | 確認できた年度 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 2024〜2026 | 滋賀 | 2022〜2026 |
| 青森 | 2025・2026 | 奈良 | 2024〜2026 |
| 宮城 | 2024〜2026 | 高知 | 2023〜2026 |
| 秋田 | 2022〜2026 | 長野 | 2022〜2026 |
| 群馬 | 2024〜2026 | 東京 | 2022〜2026 |
| 埼玉 | 2024〜2026 |
出ていなかったのは、神奈川・和歌山・広島・福岡・愛知の5都道県です(当サイトが調べた範囲での話です)。
※ 年度は、当サイトの教材づくりで確認できた範囲です。表にない年度に出題がなかったことを示すものではありません。問題文・図は載せていません(各都道県の教育委員会が公開しているものをご覧ください)。「都道県」と書いているのは、北海道・東京都と県が混ざっているためです。
自分の都道府県の過去問がどこで手に入るかは、公立高校入試の過去問|都道府県別リンク集にまとめています。
6. 手順を読むだけでは、作図はできるようになりません
ここまで読めば、手順は分かります。でも作図は、手を動かさないと身につかない単元です。コンパスの開きを変えないこと、弧をどこまでかくこと——読んで分かることと、やってできることが、いちばん離れています。
かといって、紙とコンパスを毎日出すのは続きません。そこで、スマホの画面の上で、定規とコンパスを使って実際にかける練習アプリをつくりました。
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- 選択肢を選ぶのではなく、本当にかきます。かいた図が条件を満たしているかを、アプリが判定します
- お手本の動きが見られます。どこにコンパスの針を置くか、何回かくかが分かります
- 100問。基本と応用に分かれていて、5問・10問・20問をランダムに選べます
- この記事の5つの型は、すべて入っています
調べた範囲では、入試の作図を実際にかいて判定できるアプリは見つかりませんでした。問題はすべてオリジナルで、過去問の設問文・図版は使っていません。
売り場は3つあります。中身はどれも同じです。
塾・教室でお使いの場合は、印刷・配布の制限がない塾・教室用(3,000円)もあります(当研究所の会社サイトでのお取り扱いです)。
まとめ|5つの型を覚えれば、作図は得点源になります
- 道具は垂直二等分線・角の二等分線・垂線の3つだけ
- 特別な角は「60°は正三角形」「90°は垂線」+二等分のくり返し
- 2つの条件を満たす点は、条件を線に言いかえて2本ひき、交点をとる
- かいた弧は消さない。コンパスの開きは変えない。定規で長さを測らない
当研究所が運営する学習塾でも、「本当は難しくないのに、手順があいまいで落とす」生徒が目立ちます。作図はその代表です。逆にいえば、手順を覚えるだけで戻せる点数が、ここにあります。
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この記事のような「知っていれば取れる」知識を5教科ぶんまとめて確認したい方は、一問一答&暗記カードをご覧ください。都道府県別の版と全国版があります。
