確率は、やり方さえ分かれば得点源になる単元です。それなのに、塾で見ていても、意外に落としやすい単元のひとつです。
入試の確率に、覚える公式はありません。使うのは(あてはまる場合の数)÷(全部の場合の数)というたった1本の式だけです。それなのに点が取れないのは、計算が苦手だからではなく、数え落とすからです。
当サイトが16都道県の公立高校入試(令和4〜8年度)を調べたところ、確率は16都道県すべてで出ていました。
この記事では、数え落とさないための書き方を1つに決めてしまいます。樹形図の向きと順番をそろえるだけで、確率はほとんど落とさなくなります。
1. まず結論|確率は「公式」ではなく「数え方」で決まる
入試の確率は、次の3つの作業で終わります。
- 全部で何通りあるかを数える(これが分母)
- そのうち、あてはまるのが何通りかを数える(これが分子)
- 約分する
差がつくのは1と2の「数える」ところだけです。ここを目分量でやると、2〜3通り落とします。
だから、数え方の道具を2つだけ決めておきます。
- 樹形図……ものを「選ぶ・並べる」とき(カード・くじ・玉・人)
- 6×6の表……さいころを2個投げるとき
この2つで、入試の確率はほぼ全部まかなえます。順に見ていきます。
2. 樹形図は「同じ向き・同じ順」で書く
樹形図で数え落とす人は、書く順番がバラバラです。思いついた順に書くと、必ずどこかが抜けます。
決めごとは1つだけ。「左から右へ・いつも小さい順」。これを毎回やぶらないことです。
たとえば 1・2・3・4 のカード4枚から2枚を取り出して、2けたの整数をつくるとき。十の位を小さい順に書き、そのそれぞれについて、一の位を残ったカードの小さい順に書きます。
十の位が4通り、そのそれぞれに一の位が3通りなので 4×3=12通り。樹形図の右端を数えても12個です。かけ算の答えと、右端の数が合っているか——これが自分でできる検算になります。
上の図では、3の倍数になる数を青くしてあります。12・21・24・42 の4通りなので、3の倍数になる確率は 4/12 = 1/3 です。
🔴 「取り出して並べる」と「取り出すだけ」は別ものです。
2けたの整数をつくるときは 12 と 21 は別(順番が意味を持つ)。
「2枚を同時に取り出す」ときは 1と2 = 2と1(順番は関係ない)。
問題文に「並べる」「できる整数」「順番に」とあれば前者、「同時に」「2枚取り出す」とあれば後者です。ここを読み違えると、答えがちょうど2倍(または半分)になります。
3. さいころ2個は、樹形図より「表」
さいころの問題は、当サイトが数えたなかでいちばん多く出ています(確率のカード265枚のうち53枚・15都道県)。そして、ここだけは樹形図より6×6の表が速いです。
縦に大きいさいころ、横に小さいさいころ。ますの中には聞かれているもの(和・差・積など)を書きます。
これは「2つの目の和」を書き入れた表です。和が7以下になるますは21個なので、確率は 21/36 = 7/12。表をつくってしまえば、あとは色をつけて数えるだけです。
- 分母はいつも36。さいころ2個なら、何を聞かれても36通りです
- 表は一度書けば使い回せます。「和が7以下」も「和が5の倍数」も、同じ表に色をつけ直すだけ
- 「大小2つの」「AとBの」と書いてあったら、必ず区別します。(1,2)と(2,1)は別の出方です
4. 🔴 同じ色の玉も、1個ずつ別のものとして数える
ここが、確率でいちばん多いまちがいです。
「赤玉2個と白玉1個が入った袋から2個取り出す」とき、赤玉2個を「同じ赤」とまとめてしまうと、場合の数が変わってしまいます。
赤玉に赤1・赤2と名前をつけて区別すると、取り出し方は〈赤1と赤2〉〈赤1と白〉〈赤2と白〉の3通り。2個とも赤なのは1通りなので、確率は 1/3 です。
区別しないで「赤赤」「赤白」の2通りと数えると、1/2 になってしまいます。でも、実際に袋に手を入れてみれば、赤白のほうが起こりやすいのは分かるはずです。同じに見えるものも、1個ずつ別のものとして数える。これが確率の決まりです。
樹形図を書くときも、玉には必ず赤1・赤2・白1・白2…と番号を振ってください。番号を振るのを面倒がった人から順に落とします。
5. 「少なくとも1つ」は、ひっくり返して数える
「少なくとも1個は赤である確率」。この書き方が出てきたら、そのまま数えてはいけません。当サイトが数えた範囲では、11都道県・14枚のカードにこの言い方が出てきます。
(少なくとも1つ)= 1 −(1つもない)
「少なくとも1個は赤」をそのまま数えると、〈赤が1個〉と〈赤が2個〉に分けて数えることになって手間がかかります。でも「1個も赤がない」=「2個とも白」なら、ひと息で数えられます。
赤玉2個・白玉3個から2個取り出すなら、全部で10通り、2個とも白は3通り。だから
1 − 3/10 = 7/10
「少なくとも」「1つも〜ない」「どちらも〜でない」——この3つの言い方を見たら、反対側を数えると覚えておいてください。
6. 落としやすいところ4つ
- ① 分母を数えまちがえる。「全部で何通り」を先に確定させてから、分子にとりかかります。先に分子から数え始めると、分母がいいかげんになります
- ② 約分を忘れる。21/36 のままにすると×になることがあります。答えを書く前に、必ず約分できないか見る
- ③ 確率を「◯通り」と答えてしまう。聞かれているのが確率なら分数です。逆に「何通りですか」と聞かれて分数で答えるのも同じまちがいです
- ④ 玉を戻すか戻さないかを読み落とす。「取り出した玉をもとに戻して」とあれば2回目も同じ数だけ選べます。戻さなければ1つ減ります。問題文のこの一文に、毎回線を引いてください
7. 練習問題(3問)
すべてオリジナルの問題です。答えは下にあります。紙に樹形図か表をかいてから答えてください。
第1問(表をつかう)
大小2つのさいころを同時に投げます。出た目の和が7以下になる確率を求めなさい。
第2問(樹形図をつかう)
1・2・3・4 の数字が1つずつ書かれたカードが4枚あります。この中から2枚を取り出し、取り出した順に左から並べて2けたの整数をつくります。できた整数が3の倍数になる確率を求めなさい。
第3問(ひっくり返して数える)
赤玉2個と白玉3個が入った袋から、同時に2個の玉を取り出します。少なくとも1個は赤玉である確率を求めなさい。ただし、どの玉を取り出すことも同様に確からしいものとします。
解答
第1問 7/12
全部で6×6=36通り。和が2のとき1通り、3のとき2通り、4のとき3通り、5のとき4通り、6のとき5通り、7のとき6通り。合わせて1+2+3+4+5+6=21通り。よって 21/36 = 7/12。
※ 上の表で、色のついたますを数えても21個です。
第2問 1/3
十の位が4通り、一の位が残りの3通りなので、全部で4×3=12通り。できる整数は 12・13・14・21・23・24・31・32・34・41・42・43。このうち3の倍数は12・21・24・42の4通り(各位の数の和が3の倍数になるもの)。よって 4/12 = 1/3。
※ 34 と 43 は 3+4=7 なので3の倍数ではありません。ここを落としがちです。
第3問 7/10
赤1・赤2・白1・白2・白3 と区別します。2個取り出す組み合わせは全部で10通り。「少なくとも1個は赤」の反対は「2個とも白」で、〈白1白2〉〈白1白3〉〈白2白3〉の3通り。よって 1 − 3/10 = 7/10。
※ そのまま数えると、赤1個が6通り・赤2個が1通りで7通り。答えは同じですが、手間が倍かかります。
8. どの都道県で出ているか
当サイトが教材づくりで調べた、16都道県の公立高校入試(令和4〜8年度)のうち、確率が出ていたのは16都道県すべてでした。
| 都道県 | カード | 確認できた年度 | 都道県 | カード | 確認できた年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 12枚 | 2024〜2026 | 長野 | 16枚 | 2022〜2026 |
| 青森 | 17枚 | 2025・2026 | 滋賀 | 13枚 | 2022〜2026 |
| 宮城 | 16枚 | 2024〜2026 | 奈良 | 16枚 | 2024〜2026 |
| 秋田 | 16枚 | 2022〜2026 | 和歌山 | 18枚 | 2022〜2026 |
| 群馬 | 17枚 | 2024〜2026 | 広島 | 19枚 | 2023〜2026 |
| 埼玉 | 17枚 | 2024〜2026 | 福岡 | 10枚 | 2024〜2026 |
| 東京 | 19枚 | 2022〜2026 | 高知 | 17枚 | 2023〜2026 |
| 神奈川 | 22枚 | 2024〜2026 | 愛知 | 20枚 | 2023〜2026 |
どんな題材で出ているかも数えました。さいころが群を抜いて多いのが分かります。
| 題材 | カード | 都道県 |
|---|---|---|
| さいころ | 53枚 | 15 |
| カード | 25枚 | 11 |
| 玉・球 | 22枚 | 8 |
| 並べる・選ぶ(人や順番) | 22枚 | 13 |
| 樹形図という語が出てくるもの | 16枚 | 12 |
| 「少なくとも」 | 14枚 | 11 |
| 硬貨(コイン) | 10枚 | 7 |
| くじ | 5枚 | 3 |
※ 年度は、当サイトの教材づくりで確認できた範囲です。表にない年度に出題がなかったことを示すものではありません。問題文・図は載せていません(各都道県の教育委員会が公開しているものをご覧ください)。「都道県」と書いているのは、北海道・東京都と県が混ざっているためです。
自分の都道府県の過去問がどこで手に入るかは、公立高校入試の過去問|都道府県別リンク集にまとめています。
まとめ|書き方を1つに決めれば、確率は落とさなくなります
- 確率は(あてはまる場合の数)÷(全部の場合の数)の1本だけ。公式はありません
- 樹形図は「左から右へ・いつも小さい順」。かけ算の答えと右端の数を照らして検算する
- さいころ2個は6×6の表。分母はいつも36
- 同じ色の玉も1個ずつ別のものとして数える(赤1・赤2と番号を振る)
- 「少なくとも」は反対側を数えて、1から引く
- 答える前に約分と「確率か、場合の数か」を確かめる
当研究所が運営する学習塾でも、確率は得点源にしてほしい単元です。落としてしまうのは、解き方を知らないからではなく、数え方がその日の気分で変わってしまうから。書き方を1つに決めてしまえば、それだけで戻る点数があります。
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